記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:2021/07/27
以前「フリーランス独立後の生存率と廃業の理由・・・私の周りの実態」というテーマでブログを書きましたが、ここでは具体的な事例を上げて、失敗の傾向と対策、そこから学べる成功法則を考えてみたいと思います。
「起業をしたいけれど、何をしたらよいのかわからない」と迷っている人、あるいは「起業アイデアはあるけど、具体的に何をしたらよいの?」と情報を探している人は、まず、起業本を買ってみたり、セミナーに行ったり、相談窓口に行ったりします。
しかし、それでも、殆どの人が最初の一歩すら進めない。あるいは、動き始めてもすぐに失敗、挫折してしまうのは、一体なぜなのでしょう?
すでに「ビジネスアイデアが決まっている」と言う人によくある失敗
私のところに相談に来られる方の中にも、1~2割くらい、すでにやりたいことが決まっている状態で相談にいらっしゃる方がいます。このような方が、起業に失敗する主な原因を書き出してみますと・・・
- ビジネスを壮大なスケールで考えている
- 細かいどうでもよいことばかりを気にしている
- 本を買う、体験をするなどの調査をせず、人に教えてもらおうとする
- 自己資金がない(協力者・スポンサーもいない)
- 起業する前に会社を辞めている
などがあります。
「アイデアがないけど何かをしたい」と言っている人によくある失敗
逆に「何かをしたいけれどアイデアがない」「何から始めたらよいのかがわからない」と言って相談に来られる方によくある失敗は、
- 無料、格安のセミナーを渡り歩いている
- 本を読んで満足している
- 高額講座に参加したが、友達ができただけで満足している
- 忙しいからできないが口癖
- 自信がない、まだ早い、と言い続けている
などが挙げられます。
どちらのタイプの人も、結果、副業すら立ち上げることができないか、強引に独立して、すぐに廃業に追い込まれてしまいます。
何をビジネスにするか決められない、決めたとしてもそれをビジネスにすることができない、自己満足で終わっている、などの失敗が目立ち、その結果として「私には無理だった」と、フェードアウトしてしまうのです。
たとえば、こんな失敗事例がありました・・・
起業失敗事例1・雑貨販売
会社員時代に知り合いの仕入先を開拓、ホームページを制作して、完成直後に退職。しかし、アクセスが全く伸びず、売上ゼロ。自分の商品に惚れ込んでしまい、市場のニーズから離れてしまう。結果、アルバイトで食いつなぐ生活。
アドバイスをするのなら・・・
まず、退職するのが早すぎましたね。ネットショップはアクセスが集まるようになるまで、かなりの工夫と時間を必要とします。そして、お客様のニーズを全く調査しなかったことも敗因でしたね。
起業失敗事例2・動物園ガイド
小学生の頃から動物が大好きで「動物博士」と呼ばれてきたKIさん。上野動物園、多摩動物公園、東武動物公園などを中心に、案内ガイドとしてビジネスをスタート! とすればよかったのですが「自分で動物園を持ちたい」という現実離れした夢から方向転換できず、資金もなくフェードアウト。
アドバイスをするのなら・・・
動物が好きだから、動物園を持ちたい。確かに素晴らしい夢ですが、スケールが壮大すぎましたね。もう少しダウンサイズして、目の前の一歩まで落とし込むことができていれば、きっと何かができたと思います。気持ちが切れてしまったことも残念でしたね。
起業失敗事例3・ブログライター
コラムライターのフリーランスとして独立。代理店から仕事をもらう形の「下請け」でライティングを行い、丁寧な仕事は評判もよかったが、高額なお金を受け取ることに心理的なブロックがあり、薄利のまま時間の切り売りを続け、体を壊して廃業。
アドバイスをするのなら・・・
下請けではなく、自分で仕事をとれるようになれば単価も上げられたかもしれませんね。また、一人型ビジネスでは薄利多売はアウト。時間の切り売りはすぐに限界がきます。そもそも、ビジネスモデルを間違えてしまいましたね。
起業失敗事例4・化粧品の輸入販売
会社員のまま、化粧品の輸入販売で副業をスタートしようとするも、薬事法の壁に当たり諦め、フェードアウト。現在も会社員のまま、モヤモヤの日々を過ごしている。
アドバイスをするのなら・・・
本当に好きなことだったら、壁に当たっても何とか考えられたかもしれません。お化粧品を何とかしたいと思うより、楽にお金儲けをしたいという気持ちが勝っていると、続けていくことができませんね。
起業失敗事例5・アロマオイルの販売
会社員のまま、アロマオイルの販売で副業スタート。アパートの一室をショールームとして使うなど、順調に活動を始めていたが、派遣先の変更をきっかけに会社員のままでいることを決意。環境が変わったことで、考え方が保守的になってしまった。
アドバイスをするのなら・・・
最初にショールームを持つなど、大きな投資をし過ぎてしまいましたね。なので、本業の安定が少し揺らいだ時、急に不安になってしまったのでしょう。最初は小さく、手堅くやるのがよいと思います。
起業失敗事例6・賃貸マンションのネコ用リフォーム
会社員のまま、賃貸マンションで猫を飼っている人向けのリフォーム事業で副業をスタート。ホームページを制作し、告知を始めていたところ、会社にばれてしまい解雇に。起業の道を断念。その後、再就職を果たし、サラリーマンとして活動中。
アドバイスをするのなら・・・
副業を厳しく禁止している会社にお勤めで、顔、本名を出してホームページを作ったのが失敗でしたね。会社に知れずにできるノウハウはたくさんありますので、きちんと専門家に相談してやるべきでした。でも、再就職できてよかったです。
起業失敗事例7・コーチング
会社員のまま、コーチングで副業をスタート。異業種交流会などでチラシを配り、クライアントを集めるために活動。散歩をしながらコーチングをするというアイデアで頑張るも、顧客ニーズと合わずに、お小遣い稼ぎ止まり。
アドバイスをするのなら・・・
サービスを差別化しようとして、ニーズから離れてしまっていることが失敗の原因ですね。クライアントは散歩がしたいわけではなく、どんな悩みがあるのかを、もう一度考えてみるといいですね。コーチング専業では独立は厳しいですので、他の展開も模索しましょう。
起業失敗事例8・仲間作りサークル
仲間作りをテーマに起業したものの、方向性が定まらず迷走して廃業、再就職。すでに4年以上、再起をかけて、他社のサークルに出入りしながらビジネスチャンスを模索するも、未だ副業の範囲から抜け出せていない。
アドバイスをするのなら・・・
「何の仲間なのか?」というコンセプトに問題がありましたね。もう少し絞り込みをして、きちんとマーケティングすれば、何とかなっただろうと思います。また、他社のサークルに出入りするのは止めた方がよいでしょうね。小さくとも、自分が主催者にならないと。
起業失敗事例9・コンサルタント
定年後に「コンサルタント」と名乗り起業したものの、何のコンサルタントなのか定まらず、様々な民間資格を取るために学校に通うだけの毎日。学ぶことが楽しくなり、起業は二の次になってしまう。名刺の裏に書ききれない「認定●●」という肩書だけが増え、何の役にも立っていない。
アドバイスをするのなら・・・
今すぐインプットを止めて、アウトプットを始めましょう。ブログを書くだけでもよいです。生活を切り替えましょう。資格はたくさん取っても、使わなければ役に立ちません。特に民間資格は、誰でも取れるものですので、それ自体に価値はないのです。
さて、ここまで失敗事例ばかり並べてしまいましたが、もちろん、成功している人もたくさんいるのです! 失敗しないために、成功している人がどうしてきたのかを見てみましょう。
たとえば、こんな成功事例があります!
起業成功事例1・OMさん
早期退職後、うつ病支援カウンセラーとして独立。独立までの期間に、しっかりとホームページを立ち上げて情報発信を開始。順調にアクセスを伸ばし、クライアントを多数獲得している。
成功したポイントは・・・
独立までにホームページをしっかりと構築し、クライアントが取れる状態にまで持っていったことが勝因です。また、ご自身の経験をもとに、他と違う独自のうつ病支援メソッドを確立されたことも大きいですね。失敗する理由がありません。
起業成功事例2・EJさん
会社員のまま、電気工事士試験の合格対策を配信する副業をスタート。ホームページのアクセスを伸ばし、情報商材の販売を行う。現在は、工具、ツールの販売に事業を拡大し、ネットショップからハンドツールの物販を行っている。
成功したポイントは・・・
やはりホームページを作り込んで、情報発信媒体を育てたことが強いですね。物販での副業は、仕入れ商品のリサーチにかける時間が取れるかどうかが勝負ですが、自分が大好きな、詳しい商品に限定することで、かなり効率化できましたね。
起業成功事例3・HTさん
動画撮影、映像のクリエイティブ事業で独立。結婚式を裏側から撮る戦略に特化し、感動のストーリー動画を作成している。現在も順調に成長中。
成功したポイントは・・・
表側の撮影と合わせて、裏側から撮るというコンセプトが当たりましたね。本人たちの葛藤や、周囲の応援してくれる人たち、皆の思い出になる作品になりますね。紹介が発生しやすいコンテンツになったことが、大きな勝因です。
起業成功事例4・SKさん
会社員のまま、海外進出支援コンサルティングをスタート。人脈と経験を生かして、支援体制を確立。早期退職制度を利用して独立し、書籍出版やコミュニティーを設立するなど、精力的に活動中。
成功したポイントは・・・
会社員のうちに精力的に活動し、コミュニティーの設立、WEBからの発信を進めたことがよかったと思います。会社員時代の実績をしっかりとアピールできる場と、人脈が育っていたことが、安心独立につながりました。
起業成功事例5・FRさん
会社員のまま、2つの副業をスタートしてから独立。まず月収100万円を達成した転売ビジネスを、転売を教えるビジネスに拡張させ、ツール販売とセットにして業績拡大中。
成功したポイントは・・・
物販で成功したことを、それを教えるビジネスに転換することで、利益率を高めることができたのがよかったですね。一人型ビジネスは、利益率をいかに高くするかがとても重要です。物販の資金調達リスクを上手く分散できましたね。
起業成功事例6・NAさん
会社員のまま、趣味のフィギア転売をビジネスにする副業をスタート。eBayを使って輸出をしたり、最近ではネット販売の枠を超え、秋葉原のレンタルスペースで展示販売をして売上げを拡大中。
成功したポイントは・・・
目利きができるフィギアに絞ったことが最大の勝因です。やはり、好きなことをしている人にはかないませんね。ネットだけでなく、リアルの販売もいち早く始めたことも、よかったと思います。行動力ありますね。
起業成功事例7・TSさん
結婚相談所のFCに参加して起業。この事業でやると決める前は、持っている資格を全て使おうとして、ビジネスアイデアが複雑になりすぎていた。現在は絞込みを行い、最も強みが出せる婚活分野に特化して成長中。
成功したポイントは・・・
やはり絞り込みができたことがよかったですね。勇気を持って、いらないものは切り捨てる方が、自分も商売がシンプルになってやり易くなりますし、お客様も理解し易くなります。顧客目線に立って、自分の強みを上手く集約できたのもよかったです。
起業成功事例8・SSさん
会社員のまま、町興しビジネスで社会起業ならぬ、社会貢献型副業を開始。ポータルサイトを立ち上げ、イベント開催でマスコミからも注目を浴びる。現在は独立を果たし、マーケティング支援ビジネスも立ち上げて成長中。
成功したポイントは・・・
マスコミに注目されるビジネスにできたことが、最大の勝因です。今でも、ホームページにイベント告知を載せるだけで、すぐに大手マスコミに掲載され、イベントは即日満員になるようですが、それはものすごい強みですよね。
起業成功事例9・FMさん
会社員のまま、アパート大家として副業からスタートし、1年あまりで6棟の物件を所有。その後、大家になりたい会社員向けに個別相談を提供する事業を開始し、立ち上げ3ヶ月で30万円以上の契約を複数獲得。会社を辞めて独立し、順調に成長している。
成功したポイントは・・・
サラリーマン時代に資産3億円を生み出した実績があり、生活がすでに安定していることが強みですね。新しい事業にどんどん進んでいくことができます。ホームページも完成し、今後ますます事業が拡大するでしょうね。
まとめ:起業を失敗する人には共通点がある!
いかがでしたでしょうか? 起業に失敗する人には特徴があり、成功する人にもまた共通点があります。起業は、大きく一発勝負をするのもよいのですが、会社員を続けながらしたたかに準備をすることもできます。会社員でいながらの失敗は、事実上、失敗にはなりません。ただの準備段階でのちょっとした課題にすぎないのです!
あなたに合った起業スタイルを選び、先人に学び、夢をかなえてください^^
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全10冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。